2006年2月15日水曜日

1杯目: たちのみ考

立って呑むのが好きだ。

腰をすえてやるのもいいが、立ってる姿勢でないと生まれない、独特の雰囲気や間合いがある。

たっていることがカジュアルさを生み、新しい友人とも親しくなれることがある。肩が触れ合うほどの込み具合なら、自然に笑顔で譲り合う。カウンターに2人だけなら、あまり話さない身の上もつい話せたりする。議論している二人の客から「どう思われますか」と意見を求められるときも有る。こんなのは静まり返った上等のバーのカウンターでは難しい。静かで上品なバーで、時間の澱(おり)みたいな夜を過ごすのも楽しいが。カウンタは神聖な場所。その向こう側は、バーメンしか入ってはいけない、文字どおりサンクチュアリなのだという。

立っていることがお互いに緊張感を生むときも有る。堂々たる風格の、私が目指してゆきたいような紳士にお会いしたとき。いすの有るカウンタなら、恐縮するならじっとしてればいい。近づかず。立ち飲みはそうは行かない。興味深いお話を連れ合いの方となさっているのをこちらでなるほど、と頷いていると、(いや、聞こえてしまうんですよ。)いつか気づかれて、「やあ、いっぱいどうですか?」なんてことになることもしばしば。たちのみでないとこれはなかなか無いのだろう。

たとえるなら、いすの有るバーは、脚本のある映画で、バーテンダーが有る程度はコントロールしてくれる。上等の無垢のカウンタは、そこに座る者に下品な言葉を言わせないだろうし、席に着く客も、脚本どおりの進行を楽しむ部分があるかもしれない。

たちのみは、アドリブだけで作る舞台。店主は「たのしんでください」というテーマだけを持つ。ルールもタブーも、お客さんのほうが知ってんでしょ?と、こちらに預けられる。そんな舞台には、すこしばかりの経験と自信がないと、立とうと思わない。でも、立ってみたいと思えれば、あとは大丈夫。舞台の先輩たちは後輩にアドリブを教えてくれる。態度で、ムードで。

私の大好きなバーはたくさん有るが、たちのみで出会う仲間(大先輩~息子のような年の青年まで)は皆すばらしい。一人で楽しんでいるもの勿体無いので、少しずつご紹介しよう。

お酒の場の鉄則で、人の名前は出さない。ご本人が宣伝なさりたい場合は例外。まあ大好きな酒場のことを書くのだから、お店に迷惑がかからないように細心の注意を払うが、もし読んでいてマナーやエチケットにもんだいがあれば教えていただきたい。すぐに詳しくお聞きして、改善してゆきたいので。

楽しみになってきた貴方。    おさけ おすきでしょう?

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